父の葬儀―喪主:息子

続いては前項の例2を応用させてご紹介します。
『遺族を代表し、一言ご挨拶を申し上げます。本日は、ご多忙のところ、遠路ご会葬いただき、厚く御礼を申し上げます。 父は、「仕事一筋」の人間で、したがって趣味もとりたててもたず、家にいるときはいつも所在なげでボンヤリしておりました。母や私ども子供が何を言っても笑ってフンフンと頷いてばかりでしたが、他人の悪口を言おうものなら、突然に大声で怒ったものです。
「他人の悪口を言う前に自分に悪いところがないか反省しろ」というのが口癖でした。今もそのときの怒った様子が目に浮かびます。仕事場でも偏屈なところがあり、ご迷惑をおかけしたこともあるのではないかと心配しております。
この際、お許しを賜りたくお願い申し上げます。このような父に対して、生前寄せられました皆様のご厚情に対し、心より御礼申し上げます。
私どもは、未熟ではありますが、故人の教えを守り、精進していく所存です。皆様方には、故人と同様お付き合いいただき、ご指導いただけますことをお願い申し上げます。本日はありがとうございました。』
平凡ながらも、まっすぐなところのある父親の姿と、それを愛している子供の心情が伝わってくる感じがします。